35歳で上京。痛々しい、と言われ…… [上京後]
満を持して上京した二人は愕然とします。
当初は「エンタの神様」に出られたら福岡に帰ろう、上京したという思い出が得られたら、それで十分。
そう考えていましたが、考えが甘かったことにすぐに気づかされたからです。
まずはギャラの問題。
今まで福岡よしもとで15年も働いてきたのに、そのキャリアがリセットされ、東京よしもとでは新人並みのギャラしか得られなかったからです。
そして、何度受けてもオーディションに受からない。
どの番組も新人を探しており、スーツを着た35歳の正統派漫才コンビは求められていませんでした。
ある番組には、福岡出身の若手ディレクターがおり、
「子供の頃からお二人のことをテレビで見てました。ですから、今さら来られても……」
……と、遠回しに「痛々しい」と言われてしまいます。
相変わらず借金まみれで生活は苦しい。
ある番組では、「アルタのタモリさん」は、「笑っていいとも!」のことではなく、その隣にあるキャッシングの広告のタモリさんを思い出す、ということを言っていました。
何社からも借りていて、自転車操業を繰り返していたようです。
そんな苦しい日々でしたがが、意外にも転機はすぐにやってきます。
それは福岡時代華丸さんがやっていた、児玉清さんのモノマネで、とんねるずの「みなさんのおかげでした」の一コーナー、「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」に出られるようになったからです。
児玉さんのネタがじわじわと人気を集める頃、二人はピン芸人のコンテスト、「R-1グランプリ」に出場。
大吉さんは二回戦敗退でしたが、華丸さんは決勝に残ります。
華丸さんは「ゴルフ場での福岡のおっさん」をテーマにしたネタを出そうとしますが、大吉さんが反対。
ウケている児玉さんのネタでいいじゃないか、と。
結果、見事グランプリを獲得。
コンビの片方だけが優勝してしまい、「一人だけ注目されることになるのではないか?」といういじわるなインタビューに、大吉さんはこう答えています。
「十分です。どうぞ売れてください」
二人ともダメより、一人でも浮上すればいいじゃないか、と。
満面笑顔の華丸さんに対し、大吉さんは目に涙を浮かべていました。
(ご本人は「ひどい二日酔いだった」と言っていますが……)
優勝賞金の500万円は、当初の予定どおり、大吉さんに半分渡す、と華丸さんが言いますが、大吉さんは「もらえない」と固辞します。
しかし、華丸さんは「二人で考えたネタだから」と、どうしても半分にしようと言います。
二人の間で「やる」「いらない」と何度もやり取りがあり、結果、「優勝記念にロレックスを買おう」と言うことで落ち着きました。
しかし、華丸さんが
「時計に大金はたくのはどげんか思う。何も言わずにもろうとけ」
……と、大吉さんに半分を渡したそうです。
二人で協力して得た優勝だから、という華丸さんに、あくまでも華丸さんの力で得た優勝だから、と遠慮する大吉さん。
どちらも相方への愛情と男気を感じさせるいいエピソードですね。